アカボヤ 赤ホヤ 赤ボヤ 赤海鞘

日乃出鮨雑記帳


アカボヤ

酢橘ポン酢のアカボヤの刺身

アカボヤの奨め

エビや白身魚と違い、好き嫌いがはっきりしやすい「ほや(海鞘)」。今年はどこかで異常発生したのか、養殖が順調なのか、ここのところ市場で、従来見ることの少なかったアカボヤ(赤ボヤ)をよく見かけるようになりました。これまで仕入れることもなかったアカボヤ、試しに仕入れたところホヤ好きのお客さんが結構いらっしゃることがわかり、アカボヤの人気が急騰。アカボヤの勧めということで、マボヤ(真ボヤ:Halocynthia roretzi)との対比の中で、ちょっとまた備忘録的に書いておきましょう。

アカボヤの流通

流通量に関して、アカボヤの流通量は少なかった。マボヤ(真海鞘)はほとんどが養殖で、圧倒的にアカボヤよりも流通量は多く、関東で普通ホヤと言えばマボヤを想像するはず。アカボヤの養殖率については2010年時点では皆目見当がつかない。養殖が商業ベースに乗っているかどうかも不明。


アカボヤの外観・味

マボヤは、海のパイナップル(”sea pineapple ”)といわれる通り棘皮が波状に重なっているような、あるいは沢山の疣状の突起が突き出しているような外観ですが、アカボヤは喩えていえば「海のサツマイモ」。色自体サツマイモのような色をしています。イボイボとげとげがなく、サツマイモよりも外見は樹脂様表面ですが、まさにサツマイモその物。

知らない人に、「はい、焼き芋!冷えちゃったけど」って手渡したらそのまま受け取ってしまうでしょうね〜。しばらくしてもしも汐でも噴けばビックリでしょうな。

身の色については、マボヤ(真ボヤ)の身の色がパイナップル色とすれば、アカボヤは真っ赤に熟し切った柿の実色。色の違いがそのまま味の違いになって、両者の味は相当違います。「海のパイナップル」対「海のサツマイモ」ですから当然ですが。マボヤの方が味のクセが強い。マボヤから入って、鉄味の強い味わいに染まっていればアカボヤは刺激がないってことで避けられることがあるかも。ただ以前にホヤを食べて癖がありすぎると感じたなら、是非一度アカボヤをお奨めしたいものです。

「いやいや、ホヤが全部そうじゃありません。苦み臭み共にほどよい加減で、それでいてスムーズな食感と甘みがある。部位によってはフルーティーもしくはミルキー、そんなおいしいホヤがあります。それがアカボヤです」ってな具合に。因みにアカボヤの学名は”Halocynthia aurantium”、英語圏では”sea peach”の事。海の中の夏を盛りのフルーツなのでした。


アカボヤの鰓嚢寿司

アカボヤの召し上がり方

アカボヤの召し上がり方は、普通の魚と何ら変わらず多種。塩辛はごくごく一般的ですし、焼いても干物にしても燻製にしてもよいですし、ボイルしても佳し。天麩羅やフライもあれば、勿論お召し上がりの主流たる刺身や酢の物にも。筋肉部分は寿司ネタにはちょっと・・・ただし、クリーミーな部分(少し白っぽさのある熟し切っていない柿の実色で柔らかい)はウニに似た食感で、握りにすると旨い。

暑い夏の日の日乃出鮨でのお奨めの召し上がり方は、大きめのアカボヤを捌き、余り細く切らずに氷でよく冷やす。これを自家製の冷やしたポン酢(果汁ポン酢)に大根おろし或いは紅葉おろしを少し入れて、食す。ポイントは「冷やす」こと。 よ〜く冷えた日本酒やビールにはピッタリ。


アカボヤの注意点

特にどうしてもという訳ではありませんが、捌くときにちょっとした注意点が。ホヤが"sea squirt"(海水水鉄砲)と言われているとおり、捌くに当たって無理に力をかけると中の液体が飛び出してきます。皮嚢(ホヤを覆い尽くす固い革)を包丁あるいはハサミである程度切り裂かない段階では飛び出てくる可能性があります−場合によっては天井にまで。皮嚢は大変固いので、料理バサミの利用が賢明かも。




独り言:アカボヤの養殖率はどの位なんでしょうなあ?


ホヤ関連語
赤ボヤ、赤海鞘 sea onion, Boltenia ovifera
Halocynthia aurantium セストン(食)
不飽和アルコール Cynthiaol sea peach
golden sea squirt common sea squirt
sea cucumber 鰓嚢
ほや桁網(けたあみ)漁業
被嚢 ツニシン